「ライフスタイルの質を向上」させるには、「睡眠の質を向上」させることが鍵!?
夜ぐっすり、朝すっきり。そんな理想の睡眠は、日々のちょっとした工夫で手に入るかも!
「睡眠の質を向上」させるテクニックを、作業療法士の菅原先生に教えてもらいました!
帰りの電車でよく寝過ごしてしまう
午前中の会議からあくびがとまらない
仕事のやる気にムラがある
1週間のうち、絶対眠っている時間帯である睡眠コアタイム。これが短いと、昼間に眠くなります。例えば、最も遅い就寝が夜中の3時で最も早い起床が6時の場合、コアタイムは3時間。週末に昼過ぎまで眠っても、昼間に眠くなります。そこで、できるだけコアタイムを増やしてみましょう。もし、夜中2時に就寝できればコアタイムは4時間です。コアタイムを最低6時間つくることができれば、睡眠と覚醒のメリハリがつき、昼間の眠気は減ります。
起床準備を担うコルチゾールというホルモンは、同じ時間に起床するほど、タイミングよく分泌量が高まります。週末に寝だめをすると、増えたコルチゾールが一旦低下し、最終的に起きた時間に急に増えます。すると翌朝は準備が遅れて、いつもの起床時間に急激に分泌されます。コルチゾールが急増すると、イライラしたり、やる気がなくなってしまいます。そこでまずは、平日と休日の起床時間の差は、3時間以内におさめてみましょう。起床時間のずれが少ないほど、やる気のムラも少なくなります。
睡眠中の脳の作業の生産性は、昼間の生産性と表裏一体。そして、眠ることは、誰もが毎日必ず行う作業です。睡眠の質を高めて、ベストコンディションをつくっていきましょう。
2、3時間の短時間睡眠を繰り返している
仕事、育児、家事で常に誰かと行動している
目覚ましが鳴っても気づかない
良質な眠り始めの睡眠を確保するために、子供と一緒に積極的に眠ってみましょう。このとき、例えば「0時に起きる」と起きる時間を3回唱えると、狙った時間に目覚めやすいです。夜中に起きて作業をしても、内臓の温度である深部体温が最も低くなる起床2時間前からは、再び眠りましょう。そして朝、日が昇ったら、子供を抱っこして窓際1m以内に連れていったり、子供部屋の照明をつけて、子供に光を届けると、その14時間後に眠くなるリズムがつくられて、夜の寝かしつけもラクになります。
お母さんは、家族のペースに合わせて行動することになりがちですが、相手に行動を合わせると、心拍や呼吸など、自律神経に負担がかかるので疲れやすくなります。また、お父さんの帰宅や子供の学校に合わせてリズムをつくると、家族全体が、夜更かし朝寝坊になりやすいです。そこであえて、自分が心地よく過ごせることを優先してみましょう。家族の予定が空いた隙に家事をするのではなく、自分がやりたい時間にする。こうすると疲労が減り、そのリズムに家族が同調して、結果的に家族全体のリズムが改善します。
スヌーズを使うと、余計目覚められなくなってしまいます。脳は、起床3時間前から準備をします。起床の作業終了が7時なのに、6時から何度も目覚ましの音で作業を邪魔されると、目覚めにくくなります。そこで、実際に目覚めた時間に目覚ましをかけてみましょう。7時起床なら、翌日は7時に目覚ましをかけて、「7時に起きる」と3回唱えて眠ります。すると、6時50分ごろに目覚めることがあるので、今度は6時50分に目覚ましをかける。これを繰り返すと、目標時間に起きられるようになっていきます。
快眠のためには、自分主導でリズムをつくることが大切です。自分の脳が目覚める時間や眠くなる時間を知り、その仕組みをうまく助けることで心地よいライフスタイルをつくっていきましょう。
試合前夜に眠りが浅い
運動した翌日だるさが抜けない
運動でたっぷり疲れたのに眠りが浅い
深く眠るには、内臓の温度である深部体温が眠り始めに急激に下がる必要があります。脳の温度が高いまま就寝すると、深い睡眠が得られにくくなります。そこで、眠るときに、保冷剤や冷凍したタオルを使って、耳から上の頭を冷やしてみましょう。首のあたりが冷えると目が覚めてしまうので、枕の上の方に冷たいものを敷いて眠ります。普段から実行すると、脳の温度が下がるリズムがつくられるので、大事な試合に気分が高揚しても、自然に眠れるようになります。
睡眠中には、自律神経の交感神経活動が低下するため、血圧や心拍数、呼吸数が低下します。これらが低下せずに眠っていると、朝起きたときから体の重さやだるさを感じます。睡眠による回復効果が低いので、睡眠時間を伸ばしても、だるさは解消しません。そこで、目覚めたら、仰向けになって手首に反対の手の指を当てて、脈拍を計ってみましょう。脈拍が速い日は、睡眠の質があまり良くなかったということです。継続して計ると、効率よい回復のためにすべきこと、やめるべきことを判断する指標になります。
深く眠るには、眠り始めに深部体温が急激に下がる必要があります。運動の時間が遅くなると、深部体温が下がるのも遅くなります。一般的なトレーニングをした場合、深部体温が下がるまで3時間程度かかります。22時に運動を終えて、0時に就寝をすると、まだ深部体温は高いので、眠りが浅くなります。そこで、1週間のうち、早い時間に運動をする日を数日つくり、遅い時間に運動した日は、就寝も30分程度遅らせてみましょう。就寝を遅らせた日の翌朝は、いつも通りの時間に起床すると、その晩はよりぐっすり眠れます。
睡眠中には、全体の70%の成長ホルモンが分泌されるなど、パフォーマンスを高めるために必要な作業が行われています。眠ることもトレーニングメニューの1つに加えると、昼間のトレーニングがより効果的になります。
監修:菅原 洋平
作業療法士。ユークロニア株式会社代表。アクティブスリープ指導士養成講座主宰。
国立病院機構にて高次脳機能障害や神経難病のリハビリテーションに従事。現在は、ベスリクリニック(東京都千代田区)で薬に頼らない睡眠外来を担当する傍ら、大企業の健康経営や働き方改革を推進し、生産性を向上させ医療費を抑制する事業を全国で行い、その活動は、テレビや雑誌などでも注目を集める。主な著書に、13万部を超えるベストセラー『あなたの人生を変える睡眠の法則』、12万部突破の『すぐやる!「行動力」を高める“科学的な”方法』など多数。
帰宅中に眠ると、睡眠の質が低下してしまいますが、居眠りを我慢するのは難しい。そこで、深部体温のリズムを活用してみましょう。内臓の温度である深部体温は、起床から11時間後に最高に、22時間後に最低になるリズムがあります。深部体温が高いほど、眠くなく元気です。今日の夕方に、体を動かして深部体温を上げられたら、明日の夕方にも上がりやすくなります。まずは休日の夕方に、散歩や筋トレなど、体を動かす用事をつくり、運動の頻度を増やしましょう。